養育費を支払ってもらうため、差し押さえ方法を確認しよう。

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探偵に聞いてみた

養育費を回収!差し押さえの方法とは?


離婚が成立し、養育費を支払ってもらうように取り決めたからといって、順調に養育費を支払ってもらえるケースばかりではありません。
中には、養育費の支払いが決定しているというのに、養育費の支払いを滞らせるケースもあるでしょう。

養育費は、子供をきちんと育てるために、親権者が非親権者から受け取るべきお金です。
養育費の支払いが取り決められているのにも関わらず、支払いが拒否されたとき、場合によっては財産の差し押さえをすることが可能です。

今回は、養育費の差し押さえができるケース、および差し押さえ手続きについて簡単に解説します。

一人でお子さんを育てるのはそれだけで大変なことです。
元配偶者からの養育費の支払いが遅れている、支払いを拒否されているという方は、ぜひ差し押さえに関する知識を身につけ、お子さんの将来のための支払を受けましょう。


養育費が差し押さえできる理由とは?

養育費の支払いについて取り決めをしていても、養育費の支払が滞るケースは少なくありません。

  • 養育費を支払を催促しても、忙しいなどといって逃げてしまう
  • 養育費の支払期日を過ぎているのに連絡がない、連絡がつかない
  • 元配偶者(支払う側)が再婚したとたん、養育費が支払えないと言ってきた
  • 子どもが拒絶しているのに面会させないなら養育費は支払わないと主張してきた

このようなケースで相手の主張に負けたり逃げられたりして、養育費の取得をあきらめて泣き寝入りしてしまう方も多くいます。

ですが、養育費の支払いが滞ったときには、回収するための方法がちゃんとあります。 それが、相手の財産を差し押さえ、強制的に取り立てるという方法です。

今回は、差し押さえとは何か、養育費を差し押さえることができる条件、差し押さえのための手順について解説していきます。


差し押さえとは何か?


差し押さえとは、自分の債権(この場合は養育費を受け取る権利)をもとに、相手の財産から未払い分を回収する法的行為を指します。差し押さえは裁判所を通じて行われます。

差し押さえの対象となる財産の種類は、

  1. 債権(給与、口座など)
  2. 不動産(土地・家など)
  3. 動産(不動産以外のもの)
の3つに分けられます。

養育費を相手から差し押さえる際には、1〜3のいずれも対象となりますが、ほとんどの場合は「1.債権(給与、口座など)」を差し押さえます。

そのため、ここでは「1.債権(給与、口座など)」の差し押さえに則って、説明していきます。


養育費を差し押さえるために必要な条件は?

養育費を差し押さえるために必要な条件が3つあります。
詳しく見ていきましょう。
条件1:債務名義を持っている

養育費の支払が滞ったからといって、誰でも簡単に差し押さえを請求できるわけではありません。 裁判所に差し押さえの請求ができるのは、「債務名義」を持っているときだけなのです。

債権名義とは、

  • 養育費を月々いくら支払うかが明記
  •  
  • 支払いが遅れたら差し押さえをされても文句を言わない(執行受諾文言)

など、請求権を持っていることを明らかにした公的な文書のことです。

離婚条件などを話し合うときに大抵の人が文書に起こしていると思いますが、文書によっては債務名義にならないものがあるので注意が必要です。

債務名義として認められるもの

  • 公正証書
  • 調停調書
  • 強制執行認諾約款付公正証書
  • 審判調書
  • 裁判の確定判決

など

債務名義として認められないもの

  • 離婚協議書
  • 合意書
  • 覚書
  • 口約束

債務名義がなくても、訴訟・支払督促・民事調停などの法的手段によって取得することが可能です。

弁護士などの専門家に相談してみるといいでしょう。

条件2:相手の現住所を知っている

差し押さえ手続きをするためには、相手の現住所が必要です。
離婚後に引っ越してしまっていて、今いる場所が全くわからない、という場合、まずは住所を手に入れるところからスタートすることになるでしょう。

自分で調べることが難しいときは、差し押さえ手続きを弁護士に依頼すると調査も行ってくれます。
もしくは、探偵へ人探しの依頼をすることも選択肢に入るでしょう。


条件3:相手の財産を把握している

財産の把握って?

差し押さえは、裁判所が相手の財産を強制的に取り上げてくれるものですが、「何を取り上げてもらうのか」はご自身で指定しなくてはなりません。
そのために、相手の財産を把握しておく必要があります。

今回は「債権(給与、口座など)」の差し押さえを想定しているので、

  • 預金の差し押さえ =相手の預金口座
  • 給与の差し押さえ =相手の今現在の勤務先情報

財産を把握する方法は?

しかし、離婚をした後だと、「どこに勤めているのか」「どこの銀行に口座があって、どのぐらい預金があるのか」など、わからないことも少なくありません。


そんなときに財産を把握する手段は2つあります。

弁護士会照会制度

弁護士に依頼することで、弁護士会が必要事項を企業などに調査・照会してくれる制度

財産開示

裁判所が相手を呼び出し、相手から財産の情報を取得する手続き。

公正証書があればこの手続きを請求することができる

特に財産開示では、2020年4月の法改正で、相手が裁判所からの出頭要請を無視した場合、「6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科されることになりました。
つまり、無視をすれば前科がつく可能性がある、ということです。


差し押さえようとしても口座や勤め先がわからなくて泣き寝入りするケースも多々ありましたが、この法改正でいわゆる「逃げ得」を許さなくなった、ともいわれています。


養育費の差し押さえ手続き


次に、実際の養育費の差し押さえ手続きについて見ていきましょう。

@債務名義に執行文を付与する
使用する債務名義に、「この債務名義で強制執行を行うことができる」という文言を付与してもらう必要があります。
使用する債務名義によって、執行文付与が必要な場合とそうでない場合があるため、確認が必要です。

執行文の付与は、その債務名義を作った場所で行われます。
公正証書ならば公証役場で、判決文なら裁判所にて、それぞれの正本を発行してもらい、執行文をつけてもらうよう申し立てましょう。

A必要書類を集める
次に、必要な書類を集めます。
必要書類は、
  1. 離婚公正証書正本(執行文の付与されたもので前述紹介した正本)
  2. 送達証明書(公正証書を公証役場から送り相手に届きましたと証明するもの)
  3. 当事者の住民票・戸籍謄本等(離婚公正証書作成後、住民票等を移動した場合必要となる)
  4. 資格証明書(強制執行先である相手の勤め先、口座のある銀行などの住所等が記載された商業登記事項証明書のこと。法務局で取得可能)
の4つです。

B必要書類を作成する
次に
  1. 表紙
  2. 当事者目録(債権者・債務者の住所等を記載)
  3. 請求債権目録(請求する金額を記載)
  4. 差押債権目録(金額・相手方の勤務先を記載)
といった書類を作成します。

C裁判所に差し押さえの申し立てをする

上記の必要書類がすべて揃った段階で、裁判所に差し押さえの申し立てを行います。
申し立てたのち、相手方と第三債務者に差し押さえ命令が送付されます。

差し押さえ命令が出た場合、申立人にも送達通知書が届きますので、必ず確認するようにしてください。

申し立ての際には手数料等が必要となります。申し立て手数料(収入印紙4000円)と、相手に書類を送達するための未使用の郵便切手代(3000円程度)の同封が必要になることを覚えておきましょう。

D取り立て

養育費の差し押さえが完了したら、債務者である申立人が、第三債務者(相手の勤め先、預金がある銀行)などに支払を求めることができます。

第三債務者が請求されたお金を供託所に預ける手続きを行った場合は、裁判所に対して手続きをすればよく、自ら取り立てをする必要はありません。


そうでない場合は取り立ては裁判所で代行してくれませんので、自分で第三債務者に連絡を取りましょう。


E差し押さえ完了・裁判所に完了届を提出

養育費の差し押さえが完了し、養育費が振り込まれたら、裁判所に取立完了届を提出してください。これで手続きは全て終了です。


養育費を差し押さえるときに覚えておきたいこと


裁判所に申し立てることで養育費を差し押さえることができますが、注意点があります。チェックしておきましょう。


給与の差し押さえには限度額がある

相手の給与を差し押さえる場合、差し押さえることができる限度額は法律で決められています。 養育費の場合は、給与から税金・社会保険料・通勤手当など諸手当を引いた金額の1/2までです。

多くの場合では、養育費はその1/2でまかなうことができますが、相手の給料がひどく少ないような場合には本来の額に満たなくなることもありえます。


継続的な給与の差し押さえも可能

給与を差し押さえる場合、必要性があり認められた場合には、継続的に差し押さえることも可能です。
この効果は、相手が退職する、もしくは約束の年限になるまで続きます。

引用:民事執行法151条(継続的給付の差押え)/e-GOV
養育費の請求には時効がある

養育費の請求には時効があります。

原則として5年間、裁判で確定判決が出ている場合には10年間とされています(公正証書を作成していても5年間なので注意!)。
未払いが生じたときには、早めに手を打つようにしておきましょう。


引用:民法166条(債権等の消滅時効)/e-GOV

最後に

差し押さえ手続きは必要な書類も多く手間がかかるため、養育費の取得を諦めてしまう方も少なくありません。


しかし養育費は、お子さんの健やかな成長のためにも確保しておくべきお金です。
自分だけで手続きが難しい場合は、弁護士などの専門家の力を借りながら手続きを行うことをおすすめします。


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